ainu_half.mac アイヌ語入力支援マクロ_半角カナ等改造版
(小書きカナ_半角カナ代用及びセ゜、ツ゜、ト゜_「カナ+半濁点」代用)


1、はじめに

JIS X 0213:2000 が制定され、フォントがあればパソコン上でアイヌ語表記用カナ小文字を表示、印刷することができるようになりました。しかし、これらの文字を簡便に入力するツールが存在しないため、せっかくの新しい文字も宝の持ち腐れになっていました。
そこで、Windows用エディタ「秀丸」のマクロ機能を用いて、アイヌ語表記用のカナをローマ字カナ変換で入力することができるように、ainu.mac が開発されました。
しかし、これは、特別なShift_JIS X0213フォントをインスールしなければならないので、戸惑いを感じている人もいるかもしれません。

このプログラムは、そういう人のために、通常のフォントで、小書きカナは「半角カナ」で代用を、セ゜、ツ゜、ト゜は、「カナ+半濁点」で代用としたainu.mac の改造版です。

置換機能を使えば、後でShift_JIS X0213フォントに対応したファイルに変換することは可能です。

また、Word2002等を使えば「半角カナ」を適当なフォントサイズの「全角カナ」に置換することができます。サイズは、元のサイズの0.8倍程度にすれば、ちょうどよいと思います。
ここで、メモ帳などで使われるプレーンテキストで保存すると、フォントサイズの情報が消えて元のフォントサイズの「カナ」になってしまって修正ができなくなるので、注意が必要です。
Word2002等で、適当なフォントサイズの「カナ」に置換した場合は、リッチテキスト形式(RTF)などで保存してください。

ちなみに、Shift_JIS X0213フォントを使った場合も、プレーンテキストで保存しても、「半角カナ」の場合と同様、「小書きカナ」は、通常の「カナ」と文字コードが違うので区別できます。

原作者はこのソフトウェアについての著作権を放棄しています。
改造、再配布等は自由に行ってよいので、今回、改造をしました。


2、インストール
ainu_half.lzhを解凍すると、ainu_half.mac、readme.txt(このファイル)という2つのファイルが生成されます。秀丸をインストールしたディレクトリ
(例 C:\Program Files\Hidemaru)に、マクロファイルainu_half.macをコピーします。

秀丸を起動して、「マクロ」→「マクロ登録」をクリックします。
「タイトル」に「アイヌ語入力」と入力します。
その右がわの欄の三角をクリックするとainu_half.macというファイル名があらわれますので、これを選択します。
「OK」をクリックして登録します。

次に、「その他」→「キー割り当て」をクリックします。
「CTRL」をチェックし、「CTRL+A」を選択します。
右側のダイアログで、「メニュー/マクロ」を選択します。
「マクロ1:アイヌ語入力」を選択します。
「OK」をクリックして登録します。

これで、マクロが登録され、CTRL+Aで起動するようになりました。


3、使い方

マクロの実行は2つの方法があります。

1)逐次変換

入力画面でCTRL+Aを押すと、タイトルバーの表示が「アイヌ語カナ入力」に変わります。

この状態で、ローマ字を入力するとアイヌ語カナに変換されます。終了は、もういちどCTRL+Aを押します。

子音を入力すると文字がそのまま表示されます。これは、生成するカナがまだ確定していないことを示します。次の文字を入力すれば生成するカナが確定します。
閉音節であることを確定させるためには[Enter]を入力してください。

例:

sakipe → サキペ
sak[Enter]ipe → サクイペ

[Back Space]を入力すると、未確定の子音はすべて削除されます。
矢印キーを入力すると、カーソルが移動します。

2)一括変換

変換したいローマ字列を選択し、CTRL+Aを押します。アイコンが砂時計に変わりますのでしばらく待つと、カーソル位置からカナに変換されて入力されます。
ただし、速度はかなり遅いのでご了承ください。

4、変換ルール
基本的には「アコロ イタク」(北海道ウタリ協会編 アイヌ語テキスト)で用いられている表記のローマ字を入力すると、対応するカナが生成されるようにしてあります。
子音は対応する小文字のカナに変換されますが、連続する子音については次の規則で変換されます。

kk → ッ
ss → ッ
pp → ッ
mm → ン
mp → ン

例:

ikka → イッカ (イクカではない)
sapporo → サッポロ (サプポロではない)
sampe → サンペ (サムペではない)

子音のr,xは、前の母音に合わせて変化します。

例:

tar タラ
sir シリ
hur フル
terke テレケ
kor コロ

アイウエオの小文字はxa,xi,xu,xe,xoと入力することで生成されます。スの小文字はzと入力することで生成されます。

セ゜、ト゜、ツ゜は、それぞれze,zo,zuと入力することで生成されます。ト゜をtuで生成したい人は、179行目のコメントをはずしてください。

人称接辞を分離するための記号=については・(なかてん)として出力されます。

例:
ku=kor ク・コロ
en=nure エン・ヌレ

ただし、子音と母音が人称接辞をはさむ場合には出力されません。

例:
k=ek ケク
nukar=an ヌカラン

・(なかてん)を生成したい場合にはk=[Enter]ek もしくは k/ek のように入力してください。

句読点、かっこは全角に変換されます。その他の記号は半角のままです。

ヘボン式のローマ字 ch行, sh行についても簡易的に対応しています。
ただし、sh行はサ行として出力されます。

5、最後に

JIS X 0213:2000 にアイヌ語小文字が採用されるのに尽力してくださった、芝野耕司様、佐藤知己先生に心から感謝の意を表します。それと匿名希望のainu.mac を開発した方にも深謝いたします。

本改造版で作成した「半角カナ」等を含むファイルは、Shift_JIS X0213フォントで作成したファイルと同様、MacOS XのTextEdit等のテキストコンバータによって、小書きカナを含むユニコード3.2のファイルに変換することができます。

Shift_JIS X0213フォントを含むものは、WindowsXPだとOSを改造しなければ、小書きカナ等が表示できません。しかし、この代用文字を使ったものは、WindowsXPでも、そのまま使えます。

なお、半角カナを含むファイルをメールで送る場合は、LZHなどで圧縮して、添付ファイルで送ると、全角カナに自動的に変換することはありません。



履歴

2001.1.17 Ver. 0.1     公開
2001.1.19 Ver. 0.2     カーソル処理、濁音処理を追加
2001.1.19 Ver. 0.2a     変換テーブルの間違いを訂正、"="の処理を追加
2001.1.23 Ver. 0.3     連続する子音の処理を訂正
2001.2.8 Ver. 0.4         子音と母音にはさまれた"="の処理を訂正
2003.12.7  ainu_half.mac    「半角カナ」と「カナ+半濁点」を代用文字とした改造版の作成